第だい1の大量絶滅たいりょうぜつめつ ― O-S境界きょうかい、海うみの楽園らくえんが凍こおりついた日ひ

テーマ:古生物学(ビッグファイブ第1回) / 5分速読

約やく4億おく8500万年前まんねんまえから約やく4億おく4400万年前まんねんまえまで続つづいたオルドビス紀きは、生命せいめいの多様性たようせいが爆発的ばくはつてきに拡大かくだいした時代じだいである。「オルドビス紀き」という名なは、イギリスのウェールズ地方ちほうに暮くらしていた古代こだいケルト系けい部族ぶぞく「オルドウィケス族ぞく」に由来ゆらいする。この時期じき、陸上りくじょうに進出しんしゅつした生物せいぶつはまだほとんどおらず、生命せいめいの主おもな舞台ぶたいは海うみだった。オウムガイに代表だいひょうされる軟体動物なんたいどうぶつ、三葉虫さんようちゅうなどの節足動物せっそくどうぶつ、筆石ふでいしと呼よばれる半索動物はんさくどうぶつ、床板しょうばんサンゴ、ウミユリなどの棘皮動物きょくひどうぶつが浅あさい海うみを埋うめ尽つくし、海洋かいようはまさに生物せいぶつたちの楽園らくえんとなっていた。現在げんざいわかっている数字すうじでは、海洋かいよう生物はおよそ500科か4500属ぞくに達たっし、顕生代けんせいだい全体ぜんたいの約やく12%がこの時代じだいに生息せいそくしていたとされる。さらにオルドビス紀き後期こうきには、顎あごを持もつ魚類ぎょるい(顎口類がっこうるい)が初はじめて出現しゅつげんした。我々われわれ哺乳類ほにゅうるいを含ふくむすべての脊椎動物せきついどうぶつの遠とおい祖先そせんがこの海うみに泳およいでいたのだ。

しかし約やく4億おく4400万年前まんねんまえ、この繁栄はんえいは突如とつじょとして終おわりを告つげる。オルドビス紀きとシルル紀きの境さかい、いわゆる「O-S境界きょうかい」で、全ぜん生物種の約やく85%が姿すがたを消けす大量絶滅たいりょうぜつめつが発生はっせいしたのだ。2020年ねん、中国ちゅうごく・アメリカ・オーストラリアの共同きょうどう研究けんきゅうチームは、雲南省うんなんしょう永善県えいぜんけんで発見はっけんされたオルドビス紀きとシルル紀きの完全かんぜんに連続れんぞくした地層ちそうを分析ぶんせきし、この絶滅ぜつめつが4億おく4310万年前まんねんまえから4億おく4290万年前まんねんまえまでのわずか20万年まんねんの間あいだに起おきたとする見解けんかいを発表はっぴょうした。

では、なぜこの絶滅ぜつめつは起おきたのか。当時とうじ、巨大きょだいな大陸たいりくゴンドワナが南極なんきょく域いきに位置いちしており、そこに大規模だいきぼな氷床ひょうしょうが形成けいせいされた。2017年ねん、東北大学とうほくだいがくの海保邦夫かいほうくにお教授きょうじゅらと米べいアマースト大学だいがくの研究けんきゅうチームは、中国ちゅうごくとアメリカの地層ちそうから水銀すいぎんの濃集のうしゅうを発見はっけんし、大規模だいきぼな火山かざん噴火ふんかが寒冷化かんれいかの引ひき金がねだったとする仮説かせつを発表はっぴょうした。火山かざんから成層圏せいそうけんに放出ほうしゅつされた大量たいりょうの二酸化硫黄にさんかいおうガスが硫酸りゅうさんエアロゾルとなって太陽光たいようこうを反射はんしゃし、地球ちきゅう規模きぼの寒冷化かんれいかを引ひき起おこしたというシナリオだ。海水温かいすいおんは43℃あったものがオルドビス紀き末期まっきには23℃前後ぜんごまで急降下きゅうこうかしたとされる。

さらに2024年ねんには、オーストラリアのモナシュ大学だいがくの研究けんきゅうチームが興味深きょうみぶかい新説しんせつを提唱ていしょうした。約やく4億おく6600万年前まんねんまえ、地球ちきゅうのそばで小惑星しょうわくせいが破壊はかいされ、その破片はへんが地球ちきゅうの周囲しゅういにリング(環わ)を形成けいせいしたというのだ。この環わが太陽光たいようこうを遮さえぎり、長期的ちょうきてきな寒冷化かんれいかを招まねいたことが大量絶滅たいりょうぜつめつにつながった可能性かのうせいがあるという。ほかにも、NASAとカンザス大学だいがくが2005年ねんに発表はっぴょうした、超新星ちょうしんせい爆発ばくはつによるガンマ線せんバーストがオゾン層そうを破壊はかいしたという説せつもある。原因げんいんの特定とくていは現在げんざいも進行中しんこうちゅうの研究けんきゅうテーマであり、大絶滅展だいぜつめつてんでもモロッコでの発掘はっくつ調査ちょうさの成果せいかが世界せかい初はつ公開こうかいされている。

絶滅ぜつめつは2段階だんかいで進すすんだ。まず氷床ひょうしょうの発達はったつにともなう海水準かいすいじゅんの低下ていかが浅海せんかいの生息地せいそくちを激減げきげんさせた。次つに、寒冷かんれい期きが終おわり氷こおりが溶とけて海面かいめんが再ふたたび上昇じょうしょうすると、海うみの酸素さんそ濃度のうどが急低下きゅうていかし、さらに有毒ゆうどくな金属きんぞくが海水かいすいに溶とけ出だした。生いき残のこりかけた生物せいぶつをさらに追おい打うちする、いわば「セカンドインパクト」が襲おそったのだ。三葉虫さんようちゅう、腕足類わんそくるい、サンゴ、コノドント(ヤツメウナギに似にた生物せいぶつ)、筆石ふでいしの大半たいはんが消きえ去さった。

だが全すべてが失うしなわれたわけではない。干潟ひがたのような外敵がいてきの少すくない環境かんきょうに暮くらしていたシャミセンガイの仲間なかまは生いき延のび、現在げんざいも11種しゅが生存せいぞんしている。続つづくシルル紀きには海洋かいようが回復かいふくし、生物せいぶつたちは新あたらしい進化しんかの道みちを歩あゆみ始はじめた。興味深きょうみぶかいことに、この最初さいしょの大量絶滅たいりょうぜつめつでは生命せいめいの進化しんかの方向性ほうこうせいそのものは大おおきく変かわらなかったとされる。数百万年後すうひゃくまんねんごには生態系せいたいけいがほぼ元通もとどおりに回復かいふくし、やがて生物せいぶつたちは陸上りくじょうへの大だい進出しんしゅつを果はたしていく。4億年おくねん以上いじょう前まえの海うみで起おきた最初さいしょの大惨事だいさんじは、生命せいめいの強靱きょうじんさを証明しょうめいする物語ものがたりでもあるのだ。

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